私がね、ずっとずっと歳を取って、おばあちゃんになってしまった時の話よ。
窓辺の娘は頬杖をつきながら、心地よさそうに目を細める。彼女は昔話をするような柔らかな声色で、唐突に未来の話を始めた。春と夏の間の、ゆったりとした季節。円やかな太陽の光で、彼女の頬はほんのりと赤く透き通って見える。子供の頃に聞いた歌で学んだ。赤いのは体を巡る血液の色だと。
耳も今より遠くなっているでしょ、それから目も、小指の爪よりも小さなものは見えないわ。指先も強張ってしまって、小さな部品を、大切な部品を取り落としてしまうかもしれない。
小さな部品って遍く重要な部品なのよ、やあね。その事実が愛しいとでもいうように、彼女はクスクスと笑う。小さな、本当に小さな螺子を抓むような仕草をする指先が機械油で黒色に汚れているのを知っている。彼女が抓んだ『重要な部品』は今も僕らの心臓を動かしているのだろう。見えないように少しだけ胸元を擦った。
だからそうなる前に、私は私の仕事を辞めなくちゃいけないの。悲しいけれど、でも終えなきゃいけない。迷惑は掛けられないからね。だから、最後のオーバーホールの時にはね、皆の望む通りにしようと思っているわ。私はそれに従うだけよ。
彼女はゆっくりと、暖かい風に言葉をのせる。声音はとても穏やかなのに、その目は涙で一杯になっている気がして、折角の暖かな頬が冷たい涙で冷やされてしまうような気がして、手を伸ばしかける。嗚。優しすぎることが、それだけが、彼女の欠点。僕が、僕らがその時どちらを選択すれば、窓辺の娘は泣かずに済むのだろう。

それはそれは果て無き、永久命題。問いの答えは出るはずもなく、僕はただ沈黙し、彼女は陽光に目を瞑る。


ある晴れた日の窓辺で



 
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