静かな寝息の中をこそりと抜け出して少女達は夜を往くのです。深い海のような夜空を揺蕩う今宵の月は満ち満ちて、散る星々を呑み込むように明るく夜を照らします。クスクスと笑い声は軽やかに地を跳ね、大きな月が欠ける事無く視界に入るその場所まで少女達は手を取り合って進むのでした。「その飴どうしたの?」「ウータイで買ったの、綺麗でしょ?」「あたしはチョコレート」「全部食べたら、怒られるかなあ」「案外クラウド辺りが怒ったりしてね」ふふふ。甘い香りを漂わせながら、指で星座をなぞり、満月の中に何を見るのか比べあって、クスクスと笑いあう、


少女達は紛う事無くこの満月の夜に二人きりでした。


「エアリス」ビードロのようにきらきらと透き通る飴玉を、少女は指先で弄びながら、なあにと返す片割れの少女の緑色の瞳を見つめました。それはそれは不思議な色なのです。植物の葉とも宝石の輝とも違う、彼女の色でした。「あとどれくらいで、 」その色に呑まれてしまったのでしょうか。言葉は堰き止められて口は一度閉じられました。そしてまるで月を抱くかのように立ち上がり手を広げて「 夜が明けるかな」。エアリスと呼ばれた少女はくすりと笑って、「まだ、だいじょぶだよ」立ち上がった少女に応えました。満月はまだ煌々と夜を照らしています。「」呼んだ少女の顔をエアリスは見ることが出来ません。でも彼女にはわかっていました。背を向けて月を抱く少女が今、どんな顔をしてそこに居るのかを。



「わたしね、わかるよ。ライフストリームの中でだって、きっとのこと、すぐわかる」



冷たくも暖かくも無く微温い風が少女達の頬を拭って往きます。飴玉もチョコレートも尽きて、紡ぐ言葉も無く少女達はただ夜に二人きりでした。出来ることならばこのまま夜を止めて、満月の下でずっとずっと語り合っていたいと願ったのは一体どちらの少女だったでしょう。それとも二人、笑い合って共に願ったのでしょうか。



月と少女の話

もしくはこの星の独言

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