轟々という音の中にいた
口の中を、耳の中を、柔らかいなにかが埋めて
言葉はこぽりと泡沫になって昇った
轟々という音、それ以外はまだ聞こえない
聞こえないはずだった 


わたし は よばれて いた













轟々という音の中にいた。
台風が来ているんだと誰かが言っていた。
カタカタと鳴る窓に手をかける。
「吹き込んじゃうよ、雨」
「そうかな」
「そうだよ」
あたしは元から開けるつもりもなくて、雨が煙る外界を眺めながらベッドの端に腰を下ろした。
凪が笑う。
ならやりかねない」
雨は好きだ。
轟々というあの音。
誰もが聞いたことのある音に似ている、あの。
「熱、下がった?」
「ううん」
呻く凪の吸熱剤を変えてやる。
幻術の内臓が弱ってきているのだ。
血色の悪い顔が歪む。
「ごめんなさい。どうしても、聞こえない」
その顔を見ないようにしてシーツを整える。





なにをしているの。
どうして凪に応えないの。
あたしは繋がっていないから、
凪を通してしかあんたの声を聞けない。




「凪が謝ることじゃない」
、ごめんなさい」
「謝らないで」



轟々という血脈の音の波を縫って
その声は未完の脳に直接滑り込む
羊水の中に手を浸して
その中でくるくると泳いでいた小さなあたしに
ここに居る運命を
あんたと同じ場所にいる運命を刻み込んだのは

むくろ あんたでし ょ    う  ?





「あたしはもうずっと聞こえないままなんだから」





あたしの初めて聞いた音は、骸
子宮の中で聞いたあんたの声だったのに。








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