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雨音 『ペコはヒーローって信じる?』 『―――――見参!!』 「冷やかしはお断りだよ」 打ち合いの音が響く小さな卓球場の片隅でオババがため息混じりに呟いた。 「あ!ペコだ!!」 入り口から顔を出したペコに子供たちが飛びついていく。 「ねぇ〜なんで最近打たねぇの?教えてくれよペコの速攻!!」 差し出されたラケットをひょいと退けてオババの横の指定席に座る。 「俺はもー卓球辞めたの!速攻ならホレ、あそこのドテチンにでも習ってれ」 漫画のような飴で指した台でそのドテチンが『大学生のボンボン卓球』を繰り広げていた。 「えー?あいつんのは速攻じゃないよ!ねーペコー!」 「やだ」 降り続く雨は止む気配も見せない 「オババァ?」 キィキィと椅子が鳴く。 「最近アクマ来てっかね?」 視界の端でさっきの少年がテンハンで負けた。 「わかってること聞くな」 「・・・そうね」 『うぉいアクマやい!スマイルいじめんなって言ってんじゃんか!』 視界の端の少年達がモノクロの三人と重なる。 上達しないスマイルをアクマが小突いて、ペコが責めた。 不変の公式…? 「スマイルなら来てねぇよ」 煙草の煙を押し出すようにオババが言った。 視線はなんとなくあの頃の写真だった。 「んー・・・」 『ヒーローって信じる?』 「何なんよぉ〜」 「?」 雨音が全てを掻き消す 声も景色も記憶も全て 「スマイルが泣いてんよ」 背中を丸めて、独りで 「スマイル泣いてんよ、心の中で泣いてんよ」 神社の境内で虐められているスマイル ( ) 階段を降りてタムラへ向かうペコとその後をついて歩くスマイル 「けど、思い出せないんよ」 オババよ教えてくれろ 誰でも良いから教えてくれろ 「ガキん時、おいらどうやってスマイル助けてた?」 『――――見参!!』 耳の奥で叫んだ少年ペコの声もいつの間にか雨音に掻き消されて聞こえなくなった。 キィキィと椅子を鳴らし続けるペコに球を投げつけてオババが腰を上げた。 「ほれっ帰った帰った!おめぇがいると暗くなんだよ馬鹿ガキ」 「なんだよ手伝ってやろうと思ったんに」 落ちた球がゆっくりフロアを転がって散らばった球の中に紛れていった。 いつの間に変わった? 何処で忘れた? 「また川にでも飛び込んでよく考えな」 台を拭く後姿がそう言った。 「・・・んじゃまた来んよオババ」 「来んなっつーの」 誰でも良いから 誰かおいらに教えてくれろ 「ヒーローって、何者なんよ」 end …………………………… 2003某日 |