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親
「あたしにゃ見慣れたゲームさ」 会場から縮声された歓声が届く。 「うん」 独り言ともつかない言葉に小泉が頷いた。 「フロアが広くなっただけさね」 「うん」 煙草の煙がゆっくりと昇っていく。 誰も居ないロビーに響く歓声が心地よい。 「鼻が高いだろ?片高の顧問としてよ」 表彰台に片瀬の文字が並ぶ。 歓声に耳を傾けるように目を閉じた。 「いつ聞いても歓声は良い」 脳裏に若き日の自分がいる 海を渡る事が出来なかった蝶がいる 「あの子にお前の影が見えたかい?バタフライジョー」 おばばが煙草の煙を押し出すように言った。 小泉の脳裏を飛んだ蝶を見たかのように。 「…いいや」 記憶の中の蝶が高く高く飛んでいく 「Mr.月本は私とは違うよ。卓球に命を賭けるつもりはないらしい」 「はっそうだろうね」 強い羽を持ってるのにな、残念そうに呟く小泉がまた苦笑する。 わかっているさ 月本誠を育ててもバタフライジョーは戻ってこない 「だがね、あいつは行くよ」 「うん?」 間違いないさ 「スマイルより強い羽を持ってる。…あいつは、海を渡るよ」 いつの間にか歓声も止んで場内の放送が表彰式の時間を告げていた。 「選択を間違ったな小泉」 「…いや、そんな事は無いよ。充分楽しかったさ」 満足気な小泉の顔を見てオババも笑う。 「とにかく後は任せたよ。ペコのお守りはもううんざりだ」 放送が表彰式の開始を告げる。 「さて、愛しい我が子達の晴れ舞台、拝みに行こうかね」 表彰台に選手が登る 「田村」 今はもう羽の無い蝶は笑う てっぺんの選手を見て笑う 「何だい?」 「星野の膝…」 「あぁわかってるよ」 2人の『親』の背中が笑う END ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2003年某日 |