あこるでぃおん |
二重になっている重い扉を一つずつ開いた。 再びここで主に手により楽が奏でられるのは 僕の心に彩りが戻るのも、一ヶ月先。 傍にいてくれる人がいてくれるということが、 でも、朝起きて手を伸ばしたその先に 君のぬくもりが、そこにはない。 そっと閉じている蓋を開けて ポーーー・・・ン、と渇いた音が響く。 人差し指、薬指、親指、中指、小指 気晴らしにと買ってみた、とあるアルバムの一曲目に入っていた 歌詞が、何だか ね 閑散としていた部屋に、 この曲の歌い手ほど高い声も出ず、上手でもないけれど あこるでぃおん 親指の間をしゅるりしゅるりほどけてくように あこるでぃおん あどけない手つき、で 僕の想いほどいて 「・・・はるかパパ・・・?」 いつのまにか、扉の向こうから控えめに覗かせている 「ほたる?何、ごはん?」 とたとた走って、彼女にはまだ背の高いピアノの椅子によじ登る。 ポーーー・・・ン 「今日のゴハン当番はせつなだったね。 「はるかパパ・・・」 心配そうな大きな瞳で見つめてくる。 「・・・大丈夫、ほたるとせつながいるからね。」 豊かな黒髪を撫で、抱き上げて立ち上がる。 左手で、そっと蓋を閉じた。 |