not休日、yes仕事


12月24日、この日パトロール局員となった者は眠る事を許されない。

普段の格好も危うい線ギリギリラインを走っているというのに、この格好は異常以外の何物でも無いのではないかと毎年思う。真っ赤なコートに白い綿毛、所謂サンタさんの服装に付け髭、何故此処まで凝る必要があるのかは不透明だが、毎年パトロール局員となった者はこの格好で施設へと赴く。その施設とは、孤児院であったり、養護施設であったり、幼稚園であったりと様々だが共通して言える事、何処の施設にもませ餓鬼が居ると言う事。去年の苦い思い出を思い出し背筋が一瞬凍り付いたカピスはもう、冷え切った珈琲を呷った。去年の苦い思い出とは、即ち無理矢理正体をバラされそうになった事。ただ、バラされるなら甘んじて受けるカピスだが、去年のやり方は少し強引すぎた。水を噴射されるわ、髭を毟り取られそうになるわ、黒板消しを投げつけられるわ、ろくな事がなかった。ただ、そんなろくな事をしない奴等に紛れて殆ど分からないが、自分の到着を待ち侘びてくれている子も確かにいる。大した物が入っている訳でもないのに、プレゼントの箱を貰うと満面の笑みを浮かべてくれる子も確かに居ると言う事をカピスはちゃんと知っている。そして、ろくな事しない奴も本当は淋しいだけなのだという事も。
「疲れたー・・・」
荷物配達を終え、局に帰るのも面倒だったカピスはサンタ服のまま公園のベンチへと腰掛ける。物静かな公園の向こう側の住宅地からは明かりが漏れ、賑やかで華やかなパーティーをしているのであろう家族の笑い声が聞こえてくる。
カピスは、クリスマスとは無縁の家庭に生まれ育った。その為、クリスマスに躍起にやる家庭が良く、理解出来なかった。クリスマスとは、休日の翌日程度の認識しかなかったからだ。もし、クリスマスを知っていたらもっと違う自分に為れただろうか等と馬鹿馬鹿しい事を考えてみる。溜息を吐きながら、先程購入したカフェ・オレの缶のプルタグを開け、少し口に含むと甘ったるい味がした。
「サンタさんがこんな所で油売ってて良いんですか?」
訊き知った声が木の上から聞こえてきた。
「誰だ・・・何て今更か、万事屋だろう」
声を投げかけると案の定、薄桃色の髪をした万事屋の、白辛樹が下りてきた。無駄な音も立てずに地面へと着地するのは流石と言うべきか。
「嗚呼、誰かと思ったら・・・カピスさんですか」
知っていた癖にとは言わずに、カフェ・オレを一気に流し込み、空になった空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。白辛樹のナイス・コントロール等と馬鹿にした声が耳に付く。
何か用か、と視線で問うと弧を描いていた目がうっすらと開かれる。
「カピスさんとも有ろう人が、コスプレを趣味にお持ちだとは思いませんでしたよ」
「コレは、仕事だ」
キッパリと言い放つ、カピスに白辛樹は目を丸めて驚きの表情を見せた後、ニヤリと笑みを浮かべた。うっすら見え隠れする人を試す様な視線に、カピスは睨み付ける様にベンチから腰を上げずに視線を合わせる。
「パトロールとは何でもやるんですね」
「其れが、誰かの笑顔に繋がるなら・・・俺達は何だってするさ」
そう、予め決められていた言葉をなぞる様に揺るぎなく言葉を放つカピスの目を見て、白辛樹は苦笑を零した。
「矢張り、貴方と俺は立ってる場所が違うみたいですね」
此処に居るのに遙か先の様に立っている場所が異なる二人。決して、同じ道を踏む事のないであろう二人は、其れに反して言葉を交わしている。
「そうだな、俺は正義に金を要求したくない主義だからな」
金の為ならなんだってする白辛樹と、金よりも意地を貫くカピス。不器用なのは明らかにカピスの方だが、生きて行きにくいのは白辛樹の方なのではないだろうか。
「お前みたいな職の奴は、敵が多いだろう?」
「そーですね・・・そうかも知れません」
ニッコリと弧を描いた視線は相変わらずカピスを見ては居なかった。遙か先、自分の未来を見ているのか、其れとも、何か別の物なのかは流石にカピスも分からなかったが、ただ一つ言える事は、此処じゃないと言う事。
ガタリとベンチが音を立てる程大きな動作で立ち上がるとカピスは、自販機にジュース一本分の金を入れてボタンを押す。一連の動作の後に落ちてきた缶を取り上げると白辛樹へと、放り投げた。危うく落としそうになったのを慌てて取って白辛樹は一言。
「な、なんです?」
「メリー・クリスマス!って言うらしい、今日だけだがな」
じゃぁ、と手を振って背を向けて歩き出したカピスに白辛樹は小さく吹き出した。
「メリー・クリスマス、ね」
恐らく、気付かれていたのだろう何時もと少し違う自分を。どんな、仕事をしていたのかを。
「侮れないな・・・」
月明かりは思った以上に白く冷たい。吐く息もそれと同様に白く濁っては居たが雪が降る程ではなくて、中途半端なクリスマスはもう直ぐ終わってしまうのだろう。あの、サンタさんもプレゼントを配り終えたのであるから。

「ヤバ!速く局に帰らないと殺されるかも」
通信機のスイッチを完全にオフにしていたカピスは知らぬ間に山の様に通信が入っていたであろう通信機をポケットから取り出して電源を入れる。其れと同時にご近所様に大迷惑になりそうな耳障りな音量で上司の怒鳴り声が入ってきた。
「カピスー!貴様、今何処で何をしている!!」
「は、はい・・・只今配り終えましたので直ちに本部へと帰還致します!」
これ以上怒鳴られては勘弁だとばかりに無理矢理電源を切り、局へと走った。矢張り、12月24日は眠れそうにない。


肴さんにカピス君と白辛樹の共演小説をいただきました!ありがとうございます
これはHard days, holy nightという言葉が似合いそうな…w
白と正反対のカピス君と絡めるのは本当にニヤニヤしてしまいます
こう、ツボにはまるんですよ(ぁ
しかも、二人の掛け合いもとても”らしく”ていいですね(*´∀`*)


肴さんのHPはこちら

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